【レビュー】モジニライン - 代替不可能なラインマーカー
はじめに
こんにちは、ロロロルです。今回はラインマーカー*1の革命児・モジニラインについての記事です。
このラインマーカーは開発期間3年間、試作したインクの数は450種類以上だというので驚きです。また、ターゲット層は学生のようです。*2
実際に見てみると、インクはもちろん、それ以外もしっかり検討がなされた良質な製品であることが分かります。有名な製品でもあるので、モジニラインについてはさまざまな人が記事を書いているのですが、僕はそれらの記事ではあまり触れられていない部分を詳しく書いていきます。また、それらの記事のリンクを貼ることによって、この記事を拠点にモジニラインについての全てをカバーできるように設計しました。
要約
モジニラインは代替不可能なラインマーカーです。なぜなら、他製品と異なり、どの様な文字でも滲まないインクと、接紙角度を許容するしなるペン先を持っているからです。この二つの特長により、モジニラインを使うと、他の製品に戻ることができなくなります。また、モジニラインの目立った欠点はカラーバリエーションが少ないことくらいしかありません。メインターゲットは学生であり、それが設計の随所に表れています。
概観
特長
モジニラインの最大の特長は、水性もしくはゲルインクボールペンで書いた文字を上からなぞっても、文字が滲まないことです。通常のラインマーカーだと、水性もしくはゲルインクボールペンで書いた文字を上からなぞると、文字が滲んでしまうので、なぞれる文字は、印刷された文字か油性インクのボールペンで書いた文字に限定されていました。しかしモジニラインは特殊なインクを搭載しているので、どのようなインクで書かれた文字であってもなぞることができます。
ジャストフィットと呼ばれるしなるペン先も特長の一つです。通常のラインマーカーだと、ペン先が固いので、ペン先の平らな面を紙に対して正確に向けて、角度を固定して線を引かなければ、綺麗な線を引くことができませんでした。しかしモジニラインはしなるペン先を搭載しているので、ある程度の角度のブレは許容され、ペン先の角度に対して神経質にならなくても綺麗に線を引くことができます。
ラインマーカーの革命児
差別化のための二つの方針
ラインマーカーが他のラインマーカーと差別化を図ろうとするときに、最もよく注目されるのはペン先です。ペン先を工夫した製品の中で代表的なのは三菱鉛筆のプロパスウインドウです。この製品はペン先の大部分が透明になっているため、ペンによる死角が減り、文字がはみ出しにくくなるという特長を持っています。他にもコクヨのビートルティップ、トンボの蛍コート、ゼブラのジャストフィットも有名です。ジャストフィットはシリーズ化しており、その系列の商品として今回の主役であるモジニラインが生まれました。
その次によく注目されるのがインクです。これは化学の知識を必要とするので、ペン先の加工よりも高度である場合が多いように思います。そのためインクに差別化要素があるというのはかなりインパクトが強いです。例としてステッドラーのテキストサーファーゲル、パイロットのフリクションライト、そして今回の主役であるゼブラのモジニラインが挙げられます。また、これはインパクトが強いとは言えないかもしれませんが、ペンのセオリーとして、インクの色味に特長を持たせることも多いです。これの代表例は何といってもゼブラのマイルドライナーでしょう。このペンは多くのラインマーカーにいわゆる「マイルド系」の方針を与えました。三菱鉛筆はプロパスウインドウ ソフトカラーという形で、パイロットはフリクションライト ソフトカラーまたはナチュラルカラーという形で、それぞれこの方針をなぞっています。
モジニラインの驚異性
モジニラインは驚異的なラインマーカーです。モジニラインは上に挙げた二つの方針を「ジャストフィットのペン先」と「水性もしくはゲルインクボールペンで書いた文字を上からなぞっても、文字が滲まないインク」によって両立しています。両立していること自体はプロパスウインドウのソフトカラーやフリクションライトのソフトカラーもしくはナチュラルカラーにも言えることですが、それらは「マイルド系」の方針に乗っかっているだけであまりインパクトがあるとは言えません。モジニラインが他を凌駕して驚異的であるのは、ただでさえインパクトの強い新開発のインクに、ジャストフィットのペン先がついている点にあります。
使い心地
代替不可能なラインマーカー
モジニラインの使いやすさは、一定期間使った後に他のラインマーカーを使ったとき、強く実感できます。なぜかというと、モジニラインの強みは、従来のラインマーカーではできなかったことができるようになった、というところにあるからです。
従来のラインマーカーでは、水性もしくはゲルインクボールペンで書いた文字を上からなぞることができませんでした。特に学生は、その多くが水性もしくはゲルインクボールペンを使っています。そのため多くの学生にとって、自分の書いた文字を目立たせる手段として、ボールペンのインクの色自体を派手にする、という発想しか持ち得ませんでした。しかし、モジニラインによって、自分の書いた文字を目立たせる手段の一つとして、蛍光ペンで上からなぞる、という発想が加わります。
この写真を見て、どちらがビビットであるかは明白でしょう。自分の書いた文字を蛍光ペンによってなぞるという発想は、大きな選択肢となり得ます。
さらに従来のラインマーカーでは、ペン先の平らな面を紙に対して正確に向けて、角度を固定して線を引くことをしていました。しかし、しなるペン先においては、ペン先のしなりが接紙角度の許容性を生むため、そのような丁寧な作業は不要になります。このため、モジニラインを使っていると、自分でも気づかないうちに、「ペン先の平らな面を紙に対して正確に向けて、角度を固定して線を引く」という作業を省略するようになります。
以上の二つの「自分のふるまいの変化」によって、他のラインマーカーを使うことが困難になります。モジニラインを使い慣れた状態で他のラインマーカーを使うと、自分の書いた文字をなぞるという選択肢がないことを窮屈に思ったり、不用意にペン先を接紙していびつな線を引いてしまったりと、普通のラインマーカーを不便に感じることが多くなります。
画期的にもかかわらず欠点が少ない
モジニラインの凄さは、これまで述べてきたように画期的であるにもかかわらず、欠点が少ないことにあります。
上の代替不可能性の説明は、実はさまざまなラインマーカーに当てはまることです。ここではこの観点においてモジニラインに最も特長が近いテキストサーファーゲルを用いて説明します。テキストサーファーゲルは固形マーカーであるため、あらゆるインクや接紙角度に対応します。このため、モジニラインと同様の「自分のふるまいの変化」が起こります。
しかしテキストサーファーゲルは固形マーカーであるために、クレヨン同様、意図しないところを汚してしまう欠点を持ちます。このように、往々にして画期的な製品は何かの欠点とトレードオフの関係にあります。
この点でモジニラインは優れています。モジニラインは従来のラインマーカーを踏襲したうえで二つの特長を加点しています。これがモジニラインの凄さなのです。
もちろん、欠点がないとは言いません。その欠点とは、色展開の少なさと、クリップがないことです。
モジニラインの色は5色(青、緑、黄、ピンク、オレンジ)です。これは競合他社の主力製品と比べると少ないです。例えば三菱鉛筆のプロパスウインドウシリーズは10色(基本5色+ソフトカラー5色)、パイロットのフリクションライトシリーズは18色(基本6色+ソフトカラー6色+ナチュラルカラー6色)です。なぜカラーバリエーションに乏しいのかというと、特殊なインクのため開発途中であること、もしくは同社のマイルドライナーとのキャラ被りによってマイルドカラーの展開が打ち出せないことが考えられます。
クリップがないことは一般に欠点と見なされます。しかしモジニラインは学生をターゲットにしているので、むしろそれは長所になり得ます。学生はペンを胸ポケットではなく筆箱に入れます。多くの筆箱にとって、クリップは嵩を増やすだけの存在です。このため、学生をメインターゲットにするならば、クリップがないことは欠点ではなく長所です。
最初の画像の伏線が回収されました。このような筆箱にとって、クリップがないことは利点になるのです。
カラーバリエーションの少なさは、ラインマーカーという用途を考えるに、さほど痛手ではありません。むしろそれを補って余りあるほどに、モジニラインの二つの特長は大きいと思います。画期的なラインマーカーであるにもかかわらず欠点が少ないのが、モジニラインの凄さです。
細部について
モジニラインのデザインは個性的です。白を基調として、インクの色をポイントカラーに据えています。角は全て丸めてあり、近未来的な印象を受けます。
キャップには空気穴が二つ開いています。この空気穴のデザインはモジニラインのデザインとよく調和していて、機能美を感じます。
よく観察すると、色付きの部分と白の部分とは別々の部品から成っていることが分かります。
クリップはありませんが、転がり防止用の突起があります。曲線が美しい。
このシールは綺麗にはがせるタイプのものです。
文房具としては意外性のあるフォントだと思います。スマートな、引き算の美しさがあります。
ボールペンの文字が滲まない仕組みについては、この記事が詳しいので、解説を譲ります。
文字がどの程度滲まないかの検証については、こちらの記事が詳しいので、解説を譲ります。
”MojiniLine”のフォントも、文房具としてはかなりおしゃれな部類に入ります。ただその上の”JUSTFIT”で台無しに。まあこれはモジニラインがジャストフィットシリーズにあることを表しているので仕方ない部分はあります。
ラインマーカーのデザインでネックになるのがこの注意書きです。注意書きを書かなくてもいいペンがあるのに、ラインマーカーは大体注意書きがあるのは何ででしょう。誰か詳しい方教えて下さい。
この段差はキャップを付けるためにあります。ここでも角が丸められています。
キャップを付けるとこのようになります。段差の角が丸められているため、隙間が生じます。萌えポイントですね。当然の感覚です。萌えます。
こちら側には何もありません。
同社のマイルドライナーは両用なので、少し損した感じがありますが、マイルドライナーは画材を想定している面もあるので、モジニラインのコンセプト的には必要ないと判断するのは合理的ではあります。
ペン先は同社ジャストフィットと同じものです。
縦にラインが入ったような形になっています。これはインクを詰め替える時に回しやすいようにする設計です。
この部品はゼブラのラインマーカー共用のものです。
ペン先をしならせるとこのようになります。僕はここまでしならせて使ってはいません。ここまでしならせなくても、接紙角度の許容性は十分に担保されます。
全て分解するとこのようになります。
ネジ山はその機能に対して必要十分な作りです。
綿にインクを吸い取らせています。インクが切れたら、これを入れ替えることでインクを詰め替えます。
内部の棒がインクを吸い取ることによって、ペン先にインクが供給されます。
おわりに
今回はモジニラインについて記事を書きました。モジニラインは、文字が滲まないこと、先端がしなることが特長であり、この二つによって、従来のラインマーカーでは実現できなかった使い方が可能となりました。さらに、そのように革命的な製品であるにもかかわらず、欠点が少ないことが驚異的です。細かなデザインを見ても、学生のことをしっかり考えた設計になっています。ゼブラの本気度合いが伝わってきます。
*1:ラインマーカーとは線を引くための筆記具のことです。ラインマーカーでよく知られているものの中に蛍光ペンがあります。狭義の蛍光ペンとは蛍光性インクを搭載したラインマーカーのことです。しかしながら、ラインマーカーの多くが蛍光ペンであるため、慣習的に、広義には、ラインマーカーと蛍光ペンを同一視している場合もあります。
モジニラインは狭義にも蛍光ペンです。しかし、モジニラインを語る上では、ラインマーカーまで視野を広げた方が文脈を把握しやすいです。そのため、ここでは狭義の蛍光ペンと呼べるペンもあえてラインマーカーと呼んでいます。
*2:
ノートをとるときの失敗談 第1位(※1)“書いた文字が蛍光ペンでにじんでしまう”をイオンの力で解決した蛍光ペン『ジャストフィット モジニライン』 8月10日(金)発売 |ゼブラ株式会社のプレスリリース