【レビュー】テクノマティック - 神の筆記具
こんにちは。ロロロルと申します。
本日は テクノマティック PN3015 についての記事です。
テクノマティックはぺんてるから出されていたシャーペンで、現在は廃番となっており、とても貴重です。
僕がこのシャーペンの存在を初めて知ったのは、以下のブログの記事を読んだときでした。
なんやこのシャーペン。まじかっけぇ。少年ロロロルはそう思ったものです。
獅子ゆず日記さんは、記事数こそ少ないものの、良い記事が多くてよく読んでいましたね。それはともかく。
発売年はブングトークさんによると1982年だそうです。
ブングトークさんの記事もよく読んでいました。昔は「ものてっくの文具箱」という名前でした。懐かしい~
テクノマティックについての記載はWikipediaが充実しているんですよ、意外なことに。
Technomatic (生産中止)
メカニカと並ぶ高級モデルで、定価3000円。上軸にヘアライン加工、グリップにリング状の墨入れ加工が施され、スライドパイプによるダブルノック機構、芯折れ防止機構、オートマチック、紙を押し付けて離すことによって芯が繰り出される先端プッシュ機構が搭載されている。現行品であるぺんてるのオレンズと同じく、パイプの先端は紙面にひっかからないようになめらかになっている。生産性が上がらないことが原因で、生産期間は短かった。芯径は0.5のみ。ノックによってガイドパイプがスライドし、製図用シャープペンシルと同じ4mmになる。説明書での正式な読みは「テクノマティック」だが、一般に「テクノマチック」の読みが浸透している。Technomatic・TECHNOCLIC・Technopressで俗に「テクノ三兄弟」と呼ばれる。より高級な「エクスキャリバー・テクノマティック」というものも存在する。1982年発売。
もうこれ貼りつければ説明充分でしょ。ソース怪しい部分沢山あるけど。
えーっと、種明かしすると、これほぼ僕が書きました。
こんな奴が書いているんだから、Wikipediaっていうのは信用に足らないっすよね。
メカニカと並ぶ高級モデルで、定価3000円。
ぺんてるを代表するシャーペンにメカニカというものがあって、このシャーペンはぺんてるが大日本文具株式会社というイカつい名前をしていた頃からフラッグシップモデルとして売られていました。そのメカニカが当時 定価3000円だったんですよね。そしてバブルに突入したぺんてるが、そのフラッグシップに並ぶ3000円という値をつけて送り出したシャーペンこそ、テクノマティックなのです。端的に言って、やべーシャーペンなのです。
生産性が上がらないことが原因で、生産期間は短かった。
僕はこの文章に一切責任を持ちません(笑)
噂を書いただけです。信じるも信じないもあなた次第。
説明書での正式な読みは「テクノマティック」だが、一般に「テクノマチック」の読みが浸透している。
これは本当です。ちゃんと説明書読みました。
Technomatic・TECHNOCLIC・Technopressで俗に「テクノ三兄弟」と呼ばれる。
誰が呼び始めたんでしょうね。だんご三兄弟みたいで好きです。
より高級な「エクスキャリバー・テクノマティック」というものも存在する。
存在するらしいですねえ。isuさんのツイートによると、10000円のシルバーと、20000円のゴールドがあったみたいです。っていうかなんでこんな広告持ってるんだよ。強すぎんか? 青チャート解きまくったらこんなふうになれるのかな。
昔の広告でしか見たことないんですよねぇ。実在するとは…。 pic.twitter.com/Zgr88Nf7zZ
— シャーペン同好会 / isu (@mpdokokai) July 4, 2016
エクスキャリバーはぺんてるの高級ペンです。エクスキャリバー・テクノマティックはその派生と思われます。名前とか、仕様とか、厨二心溢れていて魅力的ですね。
ぺんてるの魅力って、そういう所にあると思います。最近ではオレンズネロがそのいい例ですよね。決してお洒落で洗練されているという訳では無いんですが、所有しておきたくなる。どこか垢抜けない感じも愛おしいというか*1。
だから、なにとは言いませんけど、ポップなカラー展開をするとか、ダサくなるのは目に見えていることなんですけどね。
ロゴマークはヘアラインと相まって疾走感のあるデザイン。しかしながらリング状に三本の彫りを入れてヘアラインの流れを止めてみたり、ぺんてるの丸みを帯びたロゴがそのまま入っていたり、クリップのエンド部分がプラスチックになっていたり、どこか垢抜けない印象があって、それがデザインをより複雑に、親しみのあるものにしています。かっこいいんだけど、かっこよすぎない。
もうとりあえず金属加工が美しすぎる。ヘアラインとリングのところなんて、シャーペン好きなら萌えない人はいないでしょう。
はいここは僕の個人的な萌えポイント。クリップが出てくるところのわずかな隙間さえ美しい。あと軸のエンドに嵌め込まれている光沢のある部品が、ヘアライン加工と対比を成していて美しい。
キャップを外すと消しゴムが出てきます。当時のぺんてるによくあるタイプの緑色の消しゴム。突針は太い。
上軸とグリップはごつい金属のねじ切りで繋がっていて、これを少しだけはだけさせた時がとてもエロい。上軸ヘアライン部分から、光沢のあるねじ切り部分の間の、グリップを受け止める部分の厚みがとてもエロい。
口金は先端がキュッと絞られているので、書いている時に文字が見やすいです。ガイドパイプはノックすると飛び出して製図用と同じだけの長さになります。スライドパイプながら、先端が精密にできているので、がたつきは少ない部類かな。端面はオレンズのように丸められていて、接紙した際に、書き手に抵抗感を覚えさせないように配慮がなされています。まあ、ガイドパイプの長さを維持するためのバネの力があるんで、筆記抵抗は大いにあるんですけどね。
さて、これがテクノマティック最大のウリである先端プッシュ機構です。ガイドパイプを紙面に押し付けて離すと芯が出てきます。これはオートマチック機構と、強さの違う2つのばねを組み合わせることによって機能しています。詳しいことは実際に自分の目で確かめられることをお勧めします。文章で伝わる気がしない。
この機構は、同社のQXや、プラチナのハヤーイ、ロットリング400などにも搭載されていますが、数は非常に少ないです。
口金をグリップから外した時の写真。真鍮のボールチャックが覗いています。この部品は軸内部のバネによって押し出されている形となっているので、口金を外す際にせり出してきます。それはつまり、口金がグリップにはまっている時には、常に口金を押し出していることも意味しているので、ネジを回す時には強い抵抗感がありますし、それだけ口金が強く固定される設計となっている、すなわち筆記時に口金が緩むというのはまずありえないわけです。
それはともかくとして、口金を外すとそれにつれて芯も引きずり出されます。これは芯をホールドしているのがボールチャックであるからで、ボールチャックはこの写真で言う左下方向に動こうとする力は制限しない性質があるので、口金内部にあるゴム製のOリングがシャー芯にかける摩擦抵抗によって、口金を外した際に芯まで引きずり出されるわけです。この辺の仕組みを知りたい場合は、以下の記事を読むとおのずと理解できるかと思います。
グリップはメカニカと同様 食刻加工です。エッジが立っていて、ホールドが非常に強いです。見た目もとても美しい。あ、先ほど出てきた、上軸のヘアライン加工にバーティカルな3本のリングは、このグリップのデザインに対応しているんでしょうね。
口金内部を見てみると、ガイドパイプの部品が口金に嵌め込まれている形になっていることが分かります。そのガイドパイプの部品にOリングも付属しているんですね。オートマチック機構や先端プッシュ機構は、この部品の上下動によって、芯に抵抗がかかるのを利用して芯を繰り出し――もとい、「引きずり」出しています。
ちょっと角度を変えて。ガイドパイプがしまわれている時はこのような状態。
ガイドパイプを出すと、内部の部品が凹む形になったのがお分かりいただけるでしょうか。ガイドパイプの上下動によって、部品はこのように動きます。
さて、これはボールチャックを正面からとらえた画像です。芯をホールドしているチャック自体は本当に小さくて繊細な部品で、これがボールチャックを搭載しているオートマチックのシャーペン――例えば、オレンズネロ――が壊れやすい理由です。そのチャックと外側との隙間に、わずかに銀色のボールのようなものがご覧いただけるでしょうか。これがボールチャックの「ボール」であって、テクノマティックのボールは4つあると思われます。これは、テクノ3兄弟の次男坊であるテクノクリックと同じです。テクノクリックのボールチャックは、ブングトークさんが衝撃的な写真を以下の記事に乗せていますから、ぜひご覧になって下さい。
ちょっと角度を変えて。ボールチャックと一口にいっても、テクノマティックのそれは立体的に複雑な構造となっています。
ノックボタンを押した時の写真。テクノマティックのボールチャックは、真鍮色の外側の部分と、黒っぽい2層目と、チャック部分の3層目から成っていますが、ノックすると、2層目が前に押し出されてから、チャック部分が開きます。これは、3つの層が分離していることを示しています。
テクノマチックを全部分解するとこんな感じ。
芯タンクが金属なのは気分的にいいですよね。同年代のぺんてる5も金属ですね、そういえば。
真鍮製の部品にはボールチャックが嵌まります。銀色の部分が本当にただの芯チャックで、それにバネが巻き付いています。
金属加工萌え。
もうね、いいわぁ。
真鍮部品と銀色の芯タンクの間には、押したらバネが入っていることが分かります。先程の銀色部分にあった金属加工の凹みがこの写真では見えなくなっているのが分かりますかね。 このように、テクノマティックには様々なバネが入っていて、それぞれが複雑に他の部品に対応することによって、先端プッシュ機構という魔法を生み出しているのです。
ボールチャックを取り出してみました。
人差し指で指し示している部品を押すと、「3層目」のチャック部分だけが開きます。このチャック自体は、非常に弱い力で開きます。それは繊細なバネがこのチャックに内蔵されていることを示しており、そのことからも、ボールチャックがいかに高い技術に裏打ちされているものかということを推し量れますし、それ故に壊れやすいということもうなずけると思います。
さて、肝心の筆記感についてですが、書き心地は非常にいいです。メカニカのような「密度感」といいますか、部品が詰まっているということが実感できる、独特な書き心地が楽しめる稀有なシャーペンです。しかしながら、メカニカともまた違った書き心地なんですよね。詳しいことは、以下の記事で上手いこと説明されていると思います。
まあそんな感じで唯一無二の書き心地のシャーペンなのですが、当然欠点もありまして、まず第一に重い。これだけ機能を詰め込んで、そのほとんどが金属部品であることから察しはつくでしょうけど、とにかく重い。これを普段使いしようとか、正気の沙汰ではありませんね。あ、でも爽快感のある書き心地ではありますから、使おうと思えば使えるかも……。そして軸が短い。テクノマティックは他のシャーペンに比べて一回り小さいので、クリップが手に当たりまくります。それ故に持つときに不安定になってしまう。しかしながらグリップのホールドが強いので、なんとかなってしまう。なんだこのシャーペンは。ともかく、それでも使いづらいのは確かなのです。
まあ、嗜好品の部類に入るシャーペンでしょうね。嗜好品なんですよ、本当に。実用的かというと、先ほど書いたように、重いし、短いし、という感じで首をひねってしまうんですけど、書き心地はいいですし、軸は美しいですし、なんというか随所に「所有しておきたくなる」要素がちりばめられていて、嗜好品と呼ぶにふさわしいシャーペンなのです。写真三枚目とか見てみてくださいよ、
こんな加工、他のシャーペンで見ることができますか? できないでしょう。お前は神か、神なのか? そう、このシャーペンのオーバークオリティ具合や、萌えポイント詰め込み具合は、ほとんど神に近いレベルなんですよ。
神がかった崇高なる重厚さ、まさに一般には受けがたいお値段まで、神の筆記具かもしれません。
ほんまそれ。
テクノマティックこそ、「神の筆記具」と呼ぶにふさわしいシャーペンだと思います。
まあ、売っちゃったんですけど。
おまけです。