【感想】最近よく聴いているボカロ曲を挙げる【解釈】
- はじめに
- ゴーストルール - DECO*27 feat.初音ミク
- シュガーバイン - Dixie Flatline feat.巡音ルカ
- 晴天に記す雨の印象 - HaTa feat.初音ミク
- アムリタ - なぎさ feat.鏡音リン
- はきだす - mao sasagawa feat.初音ミク
- 黄昏melancorise - piptotao feat.初音ミク
- ユメクイボク - ジグ feat.初音ミク
- dimbula - 案山子 feat.音街ウナ
- in between - 春野 feat.初音ミク
- 楽園 - 春野 feat.初音ミク
- 深昏睡(Remix) - 歩く人 feat.初音ミク
- ダスクと雫 - 田中B feat.初音ミク,音街ウナ
- おわりに
はじめに
こんにちは。ロロロルです。
せっかくボカロタグがあるのに、まだ一度しか使っていないなーと気づきまして、それならば今回はボカロについて書いてやろう、と思ったわけです。
(過去のボカロタグの記事。ほぼるかくんのために書いた。)
しかしながら、一つ問題があります。それは、僕がボカロに詳しくないということです。
……ん? 今なんか変なこと言わなかったかこいつ。
もう一度聞いてみようじゃないか。
僕はボカロに詳しくないのです。
……あかんやん。
記事書けへんやん。
さてどうしたものか。ここでロロロルは思ったわけです。
まあ適当にごまかして書けばいいんじゃね? と。
そんなわけで、「最近よく聴いているボカロ曲を挙げる」というフワッとしたタイトルを掲げて、記事を書いてゆく次第であります。
ゴーストルール - DECO*27 feat.初音ミク
参考 | 投稿年 | 再生数 | 収録アルバム |
ニコニコ | 2016 | 7,014,051 | GHOST |
再生数すごe
腐っている僕には 腐ったものが
理解 らない
自分が腐っているというのは分かっていても、腐った思考をした自分は、もはや腐っているものを判別することすらできない。自分は本当に社会に必要なのか? と自分自身に問いかけたことのある人なら、だれしもが共感できる歌詞だと思います。 そんな自分の存在に対して、主人公はゴーストという比喩を与えます。
メーデー 僕と判っても もう抱き締めなくて
易々 んだよ
矛盾する主人公の感情。メーデー(救難信号)を発しておきながら、それが分かっても助けてくれなくていいと言う。そんなことは容易なんだ、という文字の当て方は、どこか助けてくれることを期待しているようにも取れる。自分は「腐っている」からこそ、助けられるべき存在ではないと分かっている。けれども、やはり本音では助けてもらいたい、抱きしめてもらいたい、肯定してほしいという、主人公の人間らしい葛藤が見て取れます。
たいていの場合、このような感傷はただの自意識過剰であり、お前のことなど迷惑だとも有益だとも思ってねえよ、と言われるのがオチなので、この曲と僕の解説に共感しかけたウブでピュアな読者は気を付けましょう。
シュガーバイン - Dixie Flatline feat.巡音ルカ
参考 | 投稿年 | 再生数 | 収録アルバム |
ニコニコ | 2015 | 217,114 | 合成音声ONGAKUの世界 |
ルカ姉失恋曲。
ベリーソースパンケーキ チャレンジしたけれど焦げた
あげる人いないから 覚悟きめて全部食べた
ベリーと焦げのコントラスト 意外にいけちゃったんだけど
つらさを紛らすために新しいことに挑戦するも、不安定な精神状態ではうまくいくはずもなく。それをどうにかしてくれる人も、今はそばにいないから、自分で何とかするしかないのです。覚悟を決めて食べた、焦げたパンケーキは、苦くて酸っぱくて、でも意外にイケちゃう味でした。人生は七転び八起きなのです。
あの人はシュガーバイン 水ないと生きれない
注ぐのはあたしじゃなくて構わない
あたしもシュガーバイン 乾いた涙に
雨を探せばいい 終わりは始まり
人は誰しも満たされなければ生きてはゆけない。そんな思いをシュガーバイン(観葉植物)になぞらえるルカ姉。でも、元カレを満たす人は他にいっぱいいるんだ、と悟ります。ならば別に自分が寄り添っていなくてもいいじゃないか。そんなふうに前向きにとらえるのです。じゃあ、自分を満たしてくれる人はどこにいるの……? そこでルカ姉は思うのです。そんなもの、自分で探すもんだろ、と。
強い。
晴天に記す雨の印象 - HaTa feat.初音ミク
晴天に記す雨の印象 - 初音ミク Wiki - アットウィキ
参考 | 投稿年 | 再生数 | 収録アルバム |
ニコニコ | 2014 | 45,952 | amedama |
この人の、日本語をこねくり回したような歌詞は、同族嫌悪がしてあまり好きではないのですが、たまにグサッとくる歌詞を混ぜ込んでくることがあって、それで聴くのを止められないのです。
繋がれたその手をどうか離してくれないか
あなたの温度すら奪ってしまうから
先ほど紹介した『ゴーストルール』にも通ずる部分がある歌詞です。自分という存在が、大切なものすら汚して奪ってしまうのではないか。そんな悲しい歌詞です。
そして、この曲の魅力は大サビにあります。これがすべてと言ってもいい。
夜の雨が見せた
陸 でもないような悪夢さ光の届かない天幕の舞台だ
ここにいることさえ叶わぬのならばいいさ
あなたを照らす灯になれるのであれば
雨の夜、先の見えない闇に感傷的になる主人公は、自分の想う人の前からそっと立ち去ることを決意します。その行動が想い人の未来を明るく照らすことになるならば。悲壮で美しい想いは歌となって僕らの心を震わせます。
このような重い想いは、想い人には届かず、その人はさっさと次の人を見つけるのがお決まりのパターンです。そして残された側は深い深い闇病みに堕ちてゆくのです。いや、お前の決断だから、それ。
アムリタ - なぎさ feat.鏡音リン
参考 | 投稿年 | 再生数 | 収録アルバム |
ニコニコ | 2016 | 16,930 | 空想するθ |
『なぎさ』は『mao sasagawa』の前名義。
創作に行き詰まった時に聴くとノれる曲です。
ほら 先天的なセンシビティ
また羨んでは悔やんじゃって
求めてみては
理由 を忘れ見失う
裸体になってみればさ
見えやしないの
感受性なんてものはしょせん天才には敵わない。それを求めてみては自分を見失って、創作をする理由すら分からなくなってしまう。ならば本当の自分をさらけ出してみよう。そう思っても、本当の自分なんてわからないし、それをさらけ出したところで、どうせ理解などしてもらえないのです。
らーたたたたたたたたいーに♪のところが好きです。
絡まった羨望が
身体を蝕んでいくんだ
傲慢か怠慢か最低だ。
才能に嫉妬して、そんな自分に対する罪悪感で壊れてしまいそうな主人公。「自分のことなど理解してもらえないのだ」という傲慢な思い。「それは自身の怠慢のせいだろ?」という自責の念。ああ自分はなんて最低なんだ。その思いが溢れだします。
最低だ♪のところの、音が大きくなるのが好きです。金縛りに遭ったときこんな感じになりますよね。
憂い 哭いて
泣き腫らした言葉は
笑った君に届かない
どれだけ苦しい思いをして生み出したものでも、本当に届けたい人には、その思いは届かない。この曲の再生数は、なぎさ氏のつくった楽曲のなかでもかなり悪い方です。創作というのは、いつだってそういうものなのです。
はきだす - mao sasagawa feat.初音ミク
参考 | 投稿年 | 再生数 | 収録アルバム |
ニコニコ | 2017 | 100,985 | Graduation |
内罰的病みこじらせマインドになったときに聴くと、外罰的病みこじらせマインドになることができて、自分は救われる曲です。
君に何が分かるのか教えて。
食べたつもりにならないで。
死んでしまったらさ、
泣いてくれるの?
裸体に変わるまで
てめーに俺の何が分かんだよ。適当にレッテル貼って満足してんじゃねえ。そのせいで俺が死んだら泣いてくれんのかよ? 本心で泣いてくれんのかよ? 主人公は叫びます。
実際には泣いてくれる人なんていません。人のことなど誰も分からないし、興味も無い。人間だれしも、自分が一番好きですから。
黄昏melancorise - piptotao feat.初音ミク
【歌詞】黄昏melancorise - piptotao feat.初音ミク - 意気消沈して曰く
参考 | 投稿年 | 再生数 | 収録アルバム |
ニコニコ | 2017 | 2,397 |
これを紹介するためにこの記事を書いたと言っても過言ではありません。伸びろおおお
理解を拒む歌詞と、暴力的でありながら儚げなメロディ。
『過度の期待は金木犀な恋心』
『夏の終わりに見た花が 瞼の裏に焼き付いた』
『褪せた光 頭の中で木霊する』
『はにかんでうつむいた 繚乱の火花の波に包まれた』
秋口に金木犀(初恋/誘惑/陶酔)のような恋心を抱く主人公。夏に散る花火のような、鮮烈でありながら、今では褪せてしまった思い出がよみがえります。
鏡に映った 頬を染めた貴方はだれ?
ちゃんと考えなかったけど 始まったら終わるんだよね?
鏡に映る主人公の頬は恋に染まっています。こんな気持ちにさせるのは誰なのでしょう。
始まりがあれば終わりがある。全てが終わった後に、そのことに気付く主人公。この躁な感情が、曲全体を支配しているのです。
ユメクイボク - ジグ feat.初音ミク
参考 | 投稿年 | 再生数 | 収録アルバム |
ニコニコ | 2015 | 15,324 | SATELLITE |
切ない曲の名手ジグ氏の、『メリーバッド』前の時代の名曲。マイリスに入れていないせいで、曲が良いにもかかわらず埋もれてしまっています。
見たい夢 理想 希望は 誰を想っていたって
届かないから 少しは優しくなれるんだ
自分の思い描くことは、たいていの場合、実現することはありません。でも、そんな痛みを知っているからこそ、優しくなれるのです。
甘い夢の中 明日は全部上手くいくような
そんな夢を見たんだって
今はさんざんだけど、これからきっとうまくいく。主人公はそんな希望を抱きます。でも、それはただの夢であり、現実はそうはならないということも、主人公は同時に了解しているのです。
dimbula - 案山子 feat.音街ウナ
参考 | 投稿年 | 再生数 | 収録アルバム |
ニコニコ | 2018 | 16,834 | 茶番 |
才気あふれる楽曲を制作している案山子氏の手がけた失恋ソング。
ルビーレッド
浸した記憶 忘れない
また貴方を思い出してしまう
この香が嫌いだ
ある香りが、昔の記憶を鮮明に呼び覚ますことってありますよね。この曲において、それはディンブラ(紅茶)の香りなのです。
ぅわぁすれない♪のところが好きです。
この曲は紅茶を意識した言葉遊びが楽しいです。
「もしもsugarが足りないなら」
とか。
in between - 春野 feat.初音ミク
in between - 春野 feat. 初音ミク - Vocaloid Database
参考 | 投稿年 | 再生数 | 収録アルバム |
SoundCloud | 2017 | 14,724 | filia |
フューチャーバスと、夜の闇を想起させるような甘い歌詞。春野氏の曲は外れが無いので、他の曲も聴いてみることをおすすめします。
この曲は、春野氏にしては珍しく明るい曲調ながら、歌詞は切ないです。
ああ 淡い恋に落ちて
逢いたくなった
このままじゃあ
触れた今日ですら 花に変えてしまう!
ああ 淡い恋は散って
逢えなくなった
このままじゃあ
触れた明日ですら 灰に変えてしまう!
対句が美しい。恋は人を生かしも殺しもするものなのです。
楽園 - 春野 feat.初音ミク
参考 | 投稿年 | 再生数 | 収録アルバム |
ニコニコ | 2017 | 118,095 | filia |
同一作者二曲は反則だろうか。filiaは本当に名盤だと思います。知らんけど
濃密な夜の闇を感じさせてくれる、春野氏らしい一曲。
「ねえ、このままじゃあきっと、
消えて忘れてしまうわ。
ならこのままさ、いっそ終わって仕舞えば?
此処じゃとうに目を奪って叶わないから。」
「じゃあこのままでずっと、
確かめて腕を取って。
かなしみには相応の救いを以って。
此処じゃない何処かへ連れ去ってあげるよ
ちゃんと聞かせて。」
視界すら奪われるような深い闇の中、二人がささやき合います。消えて忘れてしまわないように。悲しみを慰めるように。楽園は、二人だから行けるものなのです。
深昏睡(Remix) - 歩く人 feat.初音ミク
参考 | 投稿年 | 再生数 | 収録アルバム |
YouTube | 2018 | 8,886 | Our Candles |
春野氏の深昏睡を、歩く人氏がリミックスした、贅沢な一曲。
深昏睡自体の歌詞は難解です。というより、情報が少ない。
はっとした雨だって 置いていった傘だって
世界はあなたを救わないから
何気ない日常にも、はっとするような情景が溢れるほどに、世界は美しいものです。でも、世界は時に残酷で、細かく見れば、誰かを見捨てるようなこともあるのです。
きっと とうにお終いで 泣いてしまったことだって
全部抱えて落ちてあげるよ
最後まで離さないでいて
もう心は無いけれど
タイトルの『深昏睡』から考えると、いくらでも悪いように解釈できるのですが、あえてそれをつまびらかにするような、そんな野暮なまねはしません。ただ言えるのは、もうお終いであるのに、泣いてしまうような辛いことをすべて引き受けるような、主人公の懐の深さがあるということです。いや、それは「懐の深さ」で片づけられるような、単純なものなのでしょうか。懐が深くあれるのは、最後まで離さないでいてくれる人の存在があるからなのです。
ダスクと雫 - 田中B feat.初音ミク,音街ウナ
piapro(ピアプロ)|テキスト「ダスクと雫/初音ミク 音街ウナ」
参考 | 投稿年 | 再生数 | 収録アルバム |
ニコニコ | 2018 | 5,417 |
ミディアムテンポでウナちゃんが力強く歌い上げる一曲。
どこか懐かしいメロディと、感慨にふけるかのような歌詞が、ボカロのくせに感動を誘います。ゆらゆらも、さわやかな曲調ながらそのエッセンスが盛り込まれているのですが、この曲はストレート。
僕らは崩れ行く世界で彷徨っていただけなのに
いつしか この声も体もなくなっていく
偶然に産み落とされた命で生きることを強いられ、いつかはそれを失ってしまうという理不尽。それにふと気づいてしまうとき、人は感傷的な思いに駆られるのです。
いつからここは夜のまだらに染まって息もできない
いつしかその髪も背中もなくなっていく
例えば誕生日を素直に喜べないものだと悟ったのはいつからでしょう。形あるものはいつしか失われてしまう。髪も背中も。
そのように、単純にとらえてもいいのですが、あえて深読みをしてみましょう。
「僕ら」ということは、視点は男性で、少なくともあと一人、男性とは別に誰かがいるということです。そして男性は、形あるもののひとつとして「髪」に注目しています。このことからもう一人が女性だと考えるのは行き過ぎた解釈でしょうか。そのあとに「背中」に注目することから、男性の感傷は、女性を後ろから見た時に生まれたものだと分かります。これをひとつの*1深い愛の形と解釈するのは、深読みが過ぎるでしょうか。
おわりに
書いていたら6,588字に膨れ上がっていました。ボカロはやはり面白いですね。
ボカロの魅力は、作者が半分アマチュアであるということと、歌い手が不完全であることにあると思います。アマチュアであるからこそ、作った人の思いが、変に希釈されたり、アク抜きされたりせずに、直接聴き手に伝わってくる。歌い手が不完全だからこそ、その隙間に、聴き手が感情移入する余地が生まれる。人間ではないからこそ、そこに人間らしさがあるというのは、何とも奇妙な話です。でも、不完全なものを愛することができるのが、人間のいいところなのです。昨今の、不完全な人を排除したがる風潮に、そんなことを思いつつ。